HACCP義務化はいつから?必要書類と導入の5ステップを解説

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公開日:2026/10/20

2026/10/20

HACCPに沿った衛生管理は、2021年6月1日から原則すべての食品等事業者に義務付けられています。

飲食店や食品製造業では、必要な書類や毎日の記録方法がわからず、対応に困ることもあるでしょう。

小規模な店舗は、業種別の手引書を参考に計画や記録を整えられます。

本記事では、義務化の時期と対象、未対応のリスク、必要書類と導入の5ステップを解説します。

自社に必要な対応を整理し、専門家への相談が必要か判断する際の参考にしてください。

HACCPとは?衛生管理の仕組みと導入のメリット

食品の安全を守るには、手洗いや清掃に加え、加熱や保管の状態を確認する必要があります。

HACCPでは、食品を扱う各工程でどのような危険が生じるかを検討し、特に重要な工程を重点的に管理します。

これまで行ってきた手洗いや清掃を基本としながら、確認する項目や異常時の対応をあらかじめ決めておくことが大切です。

ここでは、HACCPの目的と衛生管理の考え方、導入で期待できる効果を解説します。

HACCPの意味と目的

HACCPはハサップと読み、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略です。

HAは危害要因分析、CCPは重要管理点を意味します。

食品に潜む危険を予測し、その危険を防ぐために重要な工程を重点的に管理する方法です。

危険には食中毒菌だけでなく、洗剤などの化学物質や金属片などの異物も含まれます。

原材料の受け入れから製造、調理、提供までの工程を調べ、危険を防ぐうえで重要な工程を継続して確認します。

たとえば加熱工程では、温度や時間の確認方法、管理基準、基準を満たさなかった場合の対応を決めておきます。

食品が完成してから検査するだけでなく、作業の途中で問題を防ぐ考え方です。

従来の衛生管理との違い

経験に頼った衛生管理では、確認する項目や異常への対応が担当者によって変わることがあります。

また、完成品の一部を検査するだけでは、すべての食品の状態を把握できません。

HACCPでは、工程に潜む危険を先に整理し、確認する箇所と方法を決めて、実施結果を記録します。

問題があったときの対応まで共有するので、担当者が変わっても同じ基準で判断しやすくなります。

ただし、従来の手洗い、清掃、器具の洗浄などが不要になるわけではありません。

一般衛生管理と、食品や工程ごとの管理の両方が必要です。

食中毒の予防と衛生管理の改善につながるメリット

加熱や冷却、保管の状態を確認すれば、加熱不足や温度の異常を見つけやすくなります。

食中毒を必ず防げるわけではありませんが、感覚だけに頼らず、決めた方法で確認することが予防につながります。

記録を残せば、冷蔵庫の温度が安定しない時間帯や、確認が抜けやすい作業も見つけやすくなるでしょう。

計画書や記録は従業員への説明にも使えるので、確認項目や判断基準を共有できます。

さらに、保健所や取引先に実施状況を説明するときも、計画書と記録が役立ちます。

記入漏れや異常が繰り返される場合は、確認の手順や担当者の役割分担を見直しましょう。

HACCP義務化はいつから?食品衛生法の改正と制度化の背景

HACCPに沿った衛生管理を義務付ける制度は、2020年6月1日に施行されました。

事業者の準備期間として1年間の経過措置が設けられ、2021年6月1日に完全施行されました。

現在は対象事業者が継続して取り組む必要があります。

新たに開業する場合も、営業開始に向けて計画と記録の仕組みを準備しましょう。

法改正の流れと背景を確認したうえで、事業者に必要な対応を見ていきましょう。

食品衛生法の改正から完全施行までの流れ

2018年6月13日に公布された改正食品衛生法で、HACCPに沿った衛生管理の制度化が盛り込まれました。

2020年6月1日の施行後、1年間は経過措置の期間でした。

2021年6月1日に完全施行され、原則すべての食品等事業者が対象になりました。

(参考:厚生労働省「全国健康関係主管課長会議資料(食品監視安全課)」)

義務化されたのは、衛生管理を計画し、実施・記録・見直しを続けることです。

第三者機関の認証取得を一律に求める制度ではありません。

まだ対応していない場合は、自社に必要な管理方法と、足りていない作業や書類を確認しましょう。

HACCPに沿った衛生管理が義務化された背景

外食や持ち帰り食品の利用が広がり、食品が製造・調理されてから消費者に届くまでの経路も多様化しています。

完成品の検査や担当者の経験だけに頼らず、工程のなかで危険を事前に防ぐ管理が求められるようになりました。

HACCPは国際的に広く用いられる衛生管理の方法で、国内でも食品の安全性を高める仕組みとして制度化されています。

小規模な営業者なども取り組めるよう、業種別の手引書を参考に衛生管理計画や記録表を作成する方法が用意されています。

義務化で事業者に求められる対応

衛生管理計画には、手洗いや清掃などの一般衛生管理と、扱う食品に応じた管理の方法を記載します。

計画の内容は従業員に伝え、必要に応じて洗浄・消毒や食品の取り扱い方法を手順書にまとめましょう。

そのうえで計画に沿って作業し、実施状況や異常時の対応を記録して保存します。

定期的な振り返りに加え、メニューや工程を変更したときにも計画を点検しましょう。

書類を用意しただけでは対応は完了しません。

誰が、いつ、何を確認するかまで決め、日々の業務に組み込む必要があります。

すでに使っている点検表があれば、必要な項目がそろっているか確認してください。

HACCP義務化の対象は?飲食店・小規模事業者の対応範囲

自社が対象かどうかは、会社の大きさだけでは判断できません。

個人経営の飲食店も対象ですが、農業・水産業の採取業や一部の営業は対象外です。

また、対象事業者のなかでも、求められる管理の進め方は業態や規模によって異なります。

営業許可が不要でも、HACCPに沿った衛生管理が必要な業種はあります。

学校や病院の給食施設では、提供する食数も確認してください。

自社の業種や作業内容を確認し、どの管理方法で対応するか判断しましょう。

対象となる業種と対象外となるケース

飲食店、食品製造・加工業、食品販売業などは、原則として対象です。

一方で農業や水産業における食品の採取業は制度化の対象外です。

(参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」)

次の営業も、HACCPに沿った衛生管理の対象外に含まれます。

  • 食品・添加物の輸入業

  • 食品・添加物の貯蔵のみ、または運搬のみの営業(冷凍・冷蔵倉庫業を除く)

  • 常温で長期保存しても衛生上の危害が生じるおそれのない包装食品の販売業

  • 器具・容器包装の輸入・販売業

対象外の事業者も、食品の安全を確保する責務があり、一般衛生管理などへの対応が必要です。

調理や加工も行っている場合は、その作業が対象になるか別に確認しましょう。

業種名だけで決めず、販売する食品と取り扱い方法を伝えて、管轄保健所へ確認してください。

飲食店や個人経営の小規模店舗の対応

個人経営の飲食店や小さなカフェも、原則としてHACCPに沿った衛生管理に取り組む必要があります。

飲食店などは、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で対応できます。

厚生労働省が内容を確認した手引書を使って、手洗い、器具の洗浄、温度管理などの計画と記録を用意しましょう。

たとえば、加熱せず提供する料理と、加熱後すぐに提供する料理では、注意する箇所が異なります。

自店のメニューを分類して、現場に合う確認方法を決めましょう。

従業員が少ない店舗でも、確認項目や記録方法を決め、毎日の作業に組み込んでください。

「HACCPに基づく衛生管理」と「考え方を取り入れた衛生管理」の違い

HACCPに基づく衛生管理では、事業者が原材料や工程に応じて危害を分析し、7原則に沿って管理します。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理では、業種別手引書を参考に計画と記録を整えます。

(参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」)

この方法で対応できるのは、飲食店などのほか、食品の取り扱いに従事する人が50人未満の事業場などです。

この人数には、製造・加工などに直接携わらない事務職員などを含めません。

人数は基本的に許可業種ごとではなく事業場全体で計算し、前年度の勤務実態を踏まえた平均で判断します。

飲食店などは、従事者数にかかわらず「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で対応できる区分に含まれます。

人数だけで判断せず、自社の業態に適用される要件も確認しましょう。

どちらの方法でも、一般衛生管理とあわせて、計画に沿った作業、記録、見直しを続ける必要があります。

給食施設や農場で確認すべき制度・基準

学校や病院などの集団給食施設も、営利を目的とする営業に該当するかどうかにかかわらず、原則としてHACCPに沿った衛生管理が必要です。

ただし、営業以外で少数の特定の人に食品を提供し、1回の提供食数が20食程度未満の施設は、HACCPに沿った衛生管理を求められません。

この場合も、適切な衛生管理に努める必要があります。

大量調理施設衛生管理マニュアルは、同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設に適用されます。

(参考:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」)

学校給食衛生管理基準などの適用や、調理を委託する場合の営業許可・届出も確認しましょう。

農場では、農業の採取業と、加工・調理・販売を伴う事業を分けて判断します。

たとえば、収穫した果物でジャムを製造する場合は、その製造についてHACCPへの対応が必要か確認しましょう。

畜産農場には農場HACCPという別の仕組みもあるので、食品衛生法の義務と認証取得を分けて確認してください。

(参考:農林水産省「家畜の生産段階における飼養衛生管理の向上について(農場HACCP等)」)

HACCP未対応だとどうなる?罰則と営業への影響

衛生管理に不備がある場合の対応には、改善指導、行政処分、刑事罰があり、それぞれ行われる条件が異なります。

衛生管理計画がない、記録が不十分といった場合は、一般的に保健所から改善指導が行われます。

指導を受けたら、改善すべき箇所と期限を確認して対応しましょう。

改善せずに放置すると、営業に関わる行政処分につながる可能性があります。

食中毒が発生した場合などは、直ちに営業停止などの処分が行われることもあります。

ここでは、指導を受けた場合の対応と、未対応の事業者が優先して取り組むべきことを解説します。

未対応の場合の保健所の指導と行政処分

保健所の食品衛生監視員は、立入検査や営業許可の更新などの機会に、計画書と実施状況を確認します。

計画がない、内容に不備がある、計画どおりに実施していないといった場合は、一般的に、まず改善に向けた行政指導が行われます。

指導に従わず改善が認められなければ、営業の禁止などの行政処分が行われることがあります。

(参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」)

食中毒が発生した場合は、直ちに営業の禁止・停止などの行政処分が行われることもあります。

行政処分を行うかどうかは、都道府県知事などが判断します。

保健所から指導を受けた場合は、改善すべき箇所と対応期限を確認しましょう。

計画の修正だけでなく、現場で実施できているかまで点検する必要があります。

改善した内容と記録を整理しておくと、保健所にも説明しやすくなります。

罰則が適用されるケース

HACCPに沿った衛生管理の不備に対し、直ちに一律の刑事罰が科される仕組みではありません。

ただし、営業停止や禁止などの行政処分に従わず営業した場合は、食品衛生法の罰則が適用される可能性があります。

(参考:e-Gov法令検索「食品衛生法」)

また、食中毒につながる食品の販売など、別の規定に違反した場合は、該当する規定に基づいて罰則の適用が判断されます。

行政指導の段階で、指摘された内容を確認して改善に取り組みましょう。

何を直せばよいかわからない場合は、担当の食品衛生監視員に尋ねてください。

食中毒や取引先の信用低下につながるリスク

加熱不足や不適切な保管を見逃すと、食中毒につながるおそれがあります。

食中毒が発生すると、営業停止などに加え、原因調査や食品の回収、顧客への対応が必要になる場合もあります。

衛生管理の説明を求められたとき、計画書や記録を示せなければ、取引先が管理体制に不安を感じることもあるでしょう。

ただし、HACCP未対応の仕入先から購入しただけで、直ちに食品衛生法違反になるわけではありません。

信頼できる事業者を選び、受け入れ時に食品の状態を確認するなどの対応は必要です。

取引条件では、法令上の義務に加えて認証や独自の基準が求められる場合があります。

法令上必要な衛生管理と、取引先が追加で求める認証や基準を区別し、それぞれに必要な準備を進めましょう。

未対応の事業者が優先して取り組むこと

まずは食品の取り扱いと業態を確認し、自社に合う手引書を用意します。

そのうえで、手洗い、清掃、保管温度、加熱など、今の管理方法と不足している項目を書き出しましょう。

衛生管理計画を作成したら、確認する人と時刻を決め、実施した日から記録を残します。

過去に記録していなかった項目を、確認済みであるかのように後から記入するのは避けてください。

指導を受けている場合は、指摘事項を優先し、保健所と改善の進め方を確認します。

ひな形の使い方や食品の管理方法に迷う場合は、専門家への相談も役立ちます。

HACCP義務化に対応する5ステップ|必要書類と記入例も紹介

扱う食品と作業工程に合わせて衛生管理計画を作り、必要な手順書と記録表を用意します。

ひな形を使う場合も、現場に合った確認項目を選び、それぞれの確認を誰が担当するか決める必要があります。

以下では、主に「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を始める場合の手順を、5つに分けて説明します。

なお、確認項目や記録の方法を決められない場合は、専門家への相談も検討しましょう。

HACCP導入支援サービス「ナインスターズ」では、法令上求められる対応をわかりやすく説明し、計画書・記録表の整備や手順書の作成、日々の運用を支援しています。

自社に必要な支援を知りたい方は、まずはナインスターズの無料相談・お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

1)自社の対応区分と業種別手引書を確認する

最初に、HACCPに基づく衛生管理と、考え方を取り入れた衛生管理のどちらで対応するか確認しましょう。

業種、食品の取り扱い、事業場の従事者数などを整理すると判断しやすくなります。

小規模な営業者などは、厚生労働省が内容を確認した業種別手引書を探しましょう。

飲食店、菓子製造、食品販売など、業態ごとに管理の考え方と様式が示されています。

手引書の名称だけで選ばず、対象となる食品や工程が自社に合うかも確かめてください。

該当する手引書が見つからない場合は、原材料や工程が似たものを参考に、管轄保健所に相談して選びましょう。

2)現在の衛生管理と食品の取り扱い工程を整理する

原材料の受け入れから保管、下処理、加熱、冷却、提供まで、食品がどのように扱われるかを書き出します。

食品製造業では、包装や出荷の工程も確認しましょう。

作業者への聞き取りだけでなく、実際の現場を見て整理すると、書類と作業のずれを見つけやすくなります。

生肉と加熱済みの食品に同じ器具を使っていないか、冷却する食品を長時間常温に置いていないかなど、危険が生じる場面を確認してください。

現在使っている清掃表や温度の記録表も確認し、そのまま活用できる書類と、追加・修正が必要な項目を整理します。

3)衛生管理計画と必要な手順書を作成する

衛生管理計画には、確認する項目、時刻や頻度、確認方法、問題があった場合の対応を記載します。

一般衛生管理と、食品や工程に応じた重要な管理を分けると整理しやすくなります。

手順が複雑な作業は、必要に応じて手順書にまとめましょう。

実施した内容を記入する記録表も、一緒に用意しておきましょう。

HACCPに基づく衛生管理では、危害要因分析や重要管理点を整理したHACCPプランなども必要です。

以下に、主な書類と記載内容の例をまとめます。

必要な書類は対応区分によって異なり、書類名や枚数が一律に決まっているわけではありません。

管理基準は、自社の食品と手引書に合わせて設定してください。

書類

記載内容の例

位置付け

衛生管理計画

冷蔵庫の温度を始業時に確認し、異常時は庫内食品の状態と保管先を確認

作成が必要

手順書

器具の洗浄・消毒の順序、使用する薬剤、使用方法

必要に応じて作成

実施記録

日付、確認者、結果、異常と対応内容

記録・保存が必要

HACCPプランなど

危害要因分析、重要管理点、管理基準、監視方法、改善措置

HACCPに基づく衛生管理では7原則に沿って整備

4)従業員に周知し、実施内容を記録する

衛生管理計画の内容は、担当者だけでなく、食品を扱う従業員にも説明します。

確認する項目とタイミング、異常を見つけた場合の連絡先を共有し、従業員がその内容を理解して作業できているか確かめましょう。

日々の記録には、確認結果に加えて、問題があった場合の対応も残します。

記入する人と記録を確認する人を決め、忙しい時間帯にも記入漏れがないか確かめましょう。

記録は、利用する手引書で推奨される期間などに応じて保存してください。

温度などの数値が必要な項目は、チェック欄だけで済ませず、数値も記録してください。

下の表は、異常時の対応を含めた架空の記入例です。

記載した温度は測定結果の例であり、管理基準を示すものではありません。

実際の基準と処置は、食品に適用される保存基準や業種別手引書に合わせて決めてください。

食品の見た目や、冷やし直した後の温度だけで安全性を判断しないようにしましょう。

日付・確認者

確認項目

確認結果

異常時の対応・再確認

10月1日・佐藤

始業時の冷蔵庫Aの温度

4℃、自店の基準内

異常なし

10月2日・佐藤

始業時の冷蔵庫Aの温度

12℃、自店の基準外

扉の閉め忘れを確認し、責任者へ報告

庫内の食品はいったん使用を止め、食品の温度や基準外だった時間を確認

計画で定めた判断基準に従い、安全性を確認できない食品を廃棄

庫内の温度が戻り、機器が正常に動くことを再確認

5)計画と記録を点検し、改善する

記録を定期的に確認し、温度の異常や記入漏れが繰り返されていないか点検します。

問題があれば、従業員の注意不足と決めつけず、確認時刻や器具の配置、設備の状態も見直しましょう。

メニュー、原材料、設備、作業工程を変更した場合にも、管理方法が合っているか確認します。

たとえば冷却工程を追加したのに、加熱だけを記録している場合は、計画と記録表の修正が必要です。

改善内容を従業員へ伝え、変更後の運用も確かめてください。

記録を確認した日や、変更した内容も残しておくと、次の点検で役立ちます。

無料の手引書・ひな形を活用!HACCPの運用負担を減らす方法

すべての書類を一から作る必要はありません。

公表されている業種別手引書には、管理の考え方に加え、計画書や記録表のひな形が掲載されています。

まずは既存の様式を使い、現場に必要な項目を確認しましょう。

記録の負担が大きい場合は、記入場所やタイミングの見直し、電子記録の利用も選択肢です。

項目を減らす場合も、必要な確認や記録を省かないようにしてください。

無料で使える資料や相談窓口を活用し、少人数でも続けやすい運用を考えましょう。

業種別手引書と無料ひな形の入手先

厚生労働省の業種別手引書のページでは、飲食店、食品製造業、販売業などの資料を無料で確認できます。

(参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(表紙検索)」)

各手引書に付属する衛生管理計画や記録表の様式、記入例も活用しましょう。

業界団体や自治体が、同じ内容を基にした資料を公開している場合もあります。

選ぶ際は、対象の食品、製造方法、改訂日を確認してください。

古い様式を使っている場合は、最新の手引書と照らし合わせる必要があります。

自社に合う手引書が見つからない場合は、原材料や工程が似た業種の手引書を参考にできるか、保健所に相談しましょう。

計画書・記録表を自社の現場に合わせるコツ

ひな形をそのまま写す前に、実際の設備、メニュー、作業時間に合うか確認します。

たとえば、冷蔵庫が複数ある店舗では、それぞれに名前や番号を付け、どの冷蔵庫の温度を記録したのかわかるようにしましょう。

確認時刻や担当者、異常時の対応も具体的に書くと、従業員が迷いにくくなります。

清掃表や始業点検表に同じ項目があれば、必要な情報を残せる範囲でまとめる方法もあります。

ただし、記録を簡略化しすぎて異常や対応がわからなくならないようにしてください。

実際に使う従業員に記入してもらい、書きにくい箇所を直しましょう。

用紙の置き場所や記入欄の大きさも、作業しながら使いやすいように調整してください。

アプリや電子記録で日々の管理を効率化する

スマートフォンやタブレットで記録すると、紙の回収や保管、集計の手間を減らせる場合があります。

厚生労働省は、一般飲食店向けに計画と実施記録を入力できるHACCP衛生管理記録アプリを公開しています。

(参考:厚生労働省「一般飲食店事業者向けHACCP衛生管理記録アプリ」)

導入前には、自社の管理項目や異常時の対応を記録できるか、保健所などから求められた際に記録を提示できるかを確認しましょう。

記録の保存期間、データの取り出し方、端末が故障したときの対応も決めておく必要があります。

アプリを使うだけでHACCP対応が完了するわけではありません。

まず計画と確認方法を定め、従業員が無理なく使えるツールを選んでください。

無料講習や保健所への相談を活用する

管轄保健所では、制度の対象や衛生管理計画の考え方について相談できます。

相談時は、扱う食品、作業工程、現在の計画書や記録表を用意すると、質問を具体的に伝えやすくなります。

自治体や業界団体が講習会を開いている場合もあるので、開催情報を確認しましょう。

無料の講習もありますが、受講条件や費用は主催者によって異なります。

公的な資料や動画は、従業員と衛生管理の基本を学ぶ際にも使えます。

工程が複雑で、自社に合う計画の作成に悩む場合は、保健所や食品衛生管理の専門家に相談しましょう。

書類作成や継続的な改善まで支援が必要な場合は、導入支援サービスの活用も検討できます。

HACCPの導入・運用を専門家に相談すべき5つのケース

手引書を読んでも、工程に合う管理方法を決められないことがあります。

担当者が通常業務と衛生管理を兼務していると、書類作成や従業員教育のための時間を確保できない場合もあるでしょう。

ここでは、HACCPの導入・運用を専門家に相談すべき5つのケースについて解説します。

なお、判断に迷っている点や、記録が続かない状況を専門家に伝え、対応方法を相談しましょう。

HACCP導入支援サービス「ナインスターズ」では、現場と書類を確認して改善方法を提案し、事業者ごとの作業内容に合わせた従業員教育も支援しています。

支援範囲を知りたい方は、サービス内容をご確認いただくか、無料相談・お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

1)自社に必要な対応がわからない

飲食店と製造業を兼ねる、複数施設で異なる食品を扱うなど、事業内容によっては対応区分の判断に迷うことがあります。

従事者数だけでなく、製品や販売方法、各事業場の作業内容も確認しましょう。

専門家への相談では、必要な管理と、自社で活用できる手引書を一緒に確認できます。

相談時は、扱う食品の一覧、施設の概要、工程の簡単なメモを用意しておきましょう。

まずは保健所に制度上の区分を確認し、その後の書類作成や運用を支援会社に相談する方法もあります。

2)衛生管理計画や記録表を作成できない

ひな形は入手できても、確認頻度や異常時の処置をどう書けばよいか迷う場合があります。

他店の計画をそのまま使うと、自社にない工程が含まれたり、必要な項目が抜けたりするおそれがあります。

専門家に現場の作業を説明し、食品の特性と設備に合わせて計画書と記録表を整えましょう。

すでにある書類を確認してもらい、不足部分だけ修正する方法もあります。

依頼する際は、書類の納品だけか、従業員への説明や運用後の確認まで含むかを確かめてください。

作成した書類を自社で修正できるかも確認しておくと、メニューや工程が変わった後の管理に役立ちます。

3)製造工程が複雑で、管理方法を決められない

複数の製品を製造していたり、加熱後に冷却・保存する工程があったりする場合は、危害が生じる箇所を把握し、適切な管理方法を決めるために専門知識が必要です。

加熱を行っていても、その後の作業で汚染が起きる可能性があるので、工程全体を見る必要があります。

専門家には原材料、製品の保存方法、工程図などを伝え、何をどこで管理するか検討してもらいましょう。

HACCPに基づく衛生管理では、重要管理点と判断基準の根拠を整理する支援も役立ちます。

似た製品の基準をそのまま使うのではなく、自社の条件に合うか確認してください。

自社と同じ業種や、似た製品を扱う事業者への支援経験があるかも、依頼前に確認しましょう。

4)人手が足りず、記録や従業員教育が続かない

記録が続かない場合は、項目が多すぎる、確認場所に用紙がない、担当が曖昧といった原因が考えられます。

従業員に記入を求めるだけでは改善しにくいので、作業の流れと記録の方法を一緒に見直しましょう。

専門家には、確認項目の整理や担当者・確認時刻の決め方に加え、新人教育や短時間の研修で使う資料の作成についても相談できます。

特定の担当者が休むと運用できない場合は、代わりに確認できる人も決めてください。

担当者が交代しても続けられるよう、確認方法や記入例を共有しておきましょう。

研修や記録の確認にかかる時間も考え、普段の業務に組み込んでください。

5)保健所や取引先から改善を求められている

指摘を受けたときは、まず求められている内容、提出する資料、対応期限を確認します。

保健所からの指導と、取引先が独自に求める監査・認証の条件は、分けて整理する必要があります。

専門家には、指摘事項と現在の計画書、実施記録を共有し、優先して直す箇所を相談しましょう。

書類を修正するだけでなく、現場の作業も見直し、改善内容が実行されているか確認する必要があります。

担当者と期限を決め、変更後の実施状況も記録してください。

依頼先には、改善計画の作成だけでなく、従業員への説明や変更後の作業確認も頼めるか尋ねましょう。

HACCP義務化に関するよくある質問

ここでは、HACCP義務化に関連する認証や資格の要否、食品衛生責任者とHACCP担当者の違い、導入支援の費用や選び方についてお答えします。

HACCP認証の取得も義務ですか?

食品衛生法に基づくHACCP対応では、第三者認証の取得は義務ではありません。

(参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」)

法律で求められるのは、衛生管理の計画を作り、実施・記録・見直しを続けることです。

JFS、FSSC22000、ISO22000などの認証は、取引先の条件などに応じて取得を検討するものです。

認証がなくても、法令に沿う管理を実施していれば対応できます。

認証を取得した後も、日々の管理は必要です。

取引先から認証を求められた場合は、必要な種類と対象範囲を確認しましょう。

認証取得にかかる費用や準備は、義務化への対応とは分けて検討してください。

HACCPに取り組むには資格や講習が必要ですか?

HACCP対応のために、全員が特定の民間資格を取得する義務はありません。

小規模な営業者などは、手引書を参考に、自社の食品と工程に合う管理を行います。

講習や研修は知識を学ぶ方法として役立ちますが、受講しただけでは対応は完了しません。

実際に計画を作成し、従業員が同じ方法で確認できるようにする必要があります。

なお、食品衛生責任者には別に資格要件があり、対象施設では選任が必要です。

調理師や栄養士などの資格を持たず、食品衛生管理者の資格要件などにも該当しない場合は、食品衛生責任者の養成講習会を受講する方法があります。

HACCPの民間資格と、食品衛生責任者の要件を混同せず、保健所に確認してください。

食品衛生責任者とHACCP担当者の役割は違いますか?

食品衛生責任者は、施設の衛生管理で中心的な役割を担い、営業者に必要な意見を伝えるなどの仕事を行います。

(参考:厚生労働省「食品衛生責任者の取扱いについて」)

選任が必要な施設では、法令に定める資格要件を満たす人を置く必要があります。

一方、HACCP担当者は、計画の作成や記録の確認などを担当する人として、社内で決めます。

同じ人が兼務することもできますが、食品衛生責任者の資格要件は別に確認してください。

(参考:厚生労働省「食品衛生責任者の取扱いについて」)

規模が大きい施設では、責任者だけに作業を集中させず、製造・調理担当者などと分担しましょう。

食品衛生管理者も別の制度なので、自社で誰を選任する必要があるか、あわせて確認してください。

HACCPの7原則12手順とは何ですか?

HACCPに基づく衛生管理を組み立てる際の基本的な進め方です。

(参考:農林水産省「食品のリスクアセスメント ~製品のリスクの見える化(R-Map)を食品に活用する~」)

最初の5手順でチームをつくり、製品、用途、工程を整理して、工程図を現場で確認します。

続く7手順では、危害要因の分析、重要管理点の決定、管理基準の設定、監視方法の設定、改善措置の設定、検証方法の設定、記録の保持を行います。

この7手順が、それぞれHACCPの7原則に対応しています。

小規模な営業者などは、手引書を活用して考え方を取り入れた衛生管理に取り組めます。

この記事の5ステップは導入の流れを整理したもので、7原則12手順を置き換えるものではありません。

自社の区分に合う方法で進めましょう。

HACCP導入支援の費用と依頼先の選び方は?

導入支援の費用は、施設数や工程の複雑さ、書類作成・現地確認・教育をどこまで依頼するかで変わります。

金額だけで判断せず、自社の課題を伝えたうえで、支援内容と見積もりを比較しましょう。

依頼先は、同じ業種での支援経験や提案内容を見て選びましょう。

交通費、書類の追加修正、導入後の相談や継続支援にかかる費用も確認してください。

書類を受け取った後に自社で管理を続けられるよう、作業方法や記録の付け方の説明も依頼しましょう。

専門家に依頼できる支援内容や費用の目安、選び方については、「HACCPコンサルとは?選び方や費用相場・依頼すべきケースを徹底解説」という記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

HACCP義務化への対応にお困りなら、ナインスターズへ無料相談を

計画書の書き方がわからない、記録が続かない、取引先の要求にどう応えるか迷っている場合は、HACCP導入支援サービス「ナインスターズ」にご相談ください。

ナインスターズでは、食品製造施設や飲食店などのHACCP導入から、維持管理・改善まで支援しています。

新たに開業する事業者には、法令上求められる対応の説明、衛生管理計画や記録表のひな形の提供、手順書の作成支援を行います。

営業許可申請に向けた準備も支援の対象です。

すでに営業している事業者には、製造所や書類を確認して改善方法を提案し、現場の作業に合わせた従業員教育も支援します。

小規模店舗や個人事業にも対応しており、全国からオンラインでのご相談が可能です。

現地訪問が必要な場合は、対応可否と交通費などを事前にご案内します。

何から始めるべきかわからない段階でも構いませんので、無料相談・お問い合わせフォームから、事業内容と現在のお困りごとをお聞かせください。

ご相談内容を確認し、必要な支援とお見積もりをご案内します。

まとめ

HACCPに沿った衛生管理を義務付ける制度は、2021年6月1日に完全施行されました。

飲食店や小規模事業者も、原則として対象です。

義務化への対応に、第三者認証の取得は必須ではありません。

自社に合った衛生管理計画を作成し、計画に沿った作業と記録、見直しを続ける必要があります。

まず対応区分と業種別手引書を確認し、工程の整理、計画と必要な手順書の作成、従業員への周知と記録、点検と改善の順で進めましょう。

無料のひな形は役立ちますが、現場に合わせる作業が必要です。

書類作成や管理方法の判断に迷う場合、記録や教育が続かない場合は、保健所や専門家へ相談してください。